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「瞑想を続けたら、自分の中で何かが変わるのだろうか。」
そう感じながら実践している人も多いのではないでしょうか。
マインドフルネス瞑想が心や体に良い影響を与えることは、これまでも報告されてきました。
今回の研究では、健康な成人を対象に1ヶ月間の瞑想訓練を行ったところ、注意や気づきに関わる「脳の領域同士のつながり」が強まっていたことが分かりました。
この変化は、瞑想を続けることが脳の働き方そのものに影響する可能性を示唆しています
この記事を読んでわかること
- 1ヶ月の瞑想訓練で、脳にある複数の領域間のつながりが強まった可能性がある
- 変化が見られたのは、主に「注意や気づきに関わる領域」だった
- 脳に変化があっても、本人の自覚には明確な差が見られなかった
※本記事は、科学的知見や専門家の知見、研究データの紹介を目的としており、医学的アドバイスではありません。
診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。
また、本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。最新の情報については、必ずご自身でご確認ください。
用語解説
何か特定の作業をしていない「ぼんやりしているとき」に働くとされる脳のネットワーク。この研究では、ネットワーク抽出解析によってDMNがいくつかの領域に分けられ、そのうち上後方に位置する部分を「spDMN(superior posterior default mode network)」と区分しています。
変化や重要な情報に気づき、反応するときに働くとされる脳のネットワーク。この研究では、ネットワーク抽出解析によってSNがいくつかの領域に分けられ、そのうち背側に位置する部分を「dSN(dorsal salience network)」、島皮質に近い部分を「insSN(insular salience network)」と区分しています。
注意を向けたり、目的に沿って考えたりするときに働くとされる脳のネットワーク。
時間の流れの中で、脳のつながり方がどのように変化するかを追跡する解析方法。
訓練前後の平均的な脳のつながりの強さを比較する解析方法。
特定の領域を基準として、そこから脳全体とのつながりを調べる解析方法。
脳全体の活動データから、意味のあるまとまり(ネットワーク)を自動的に取り出す解析方法。
掲載誌:Scientific Reports
論文:「 Mindfulness meditation increases default mode, salience, and central executive network connectivity 」
背景:未検証だった「瞑想」と「脳内ネットワーク」の関係
マインドフルネスとは、判断を加えずに、今この瞬間に注意を向け続ける心のあり方を指します。
これは瞑想の実践を通じて培われるとされており、ストレスの軽減など、さまざまな面での効果が知られてきました。
こうした効果がどのような仕組みで生まれるのかを解明しようと、これまで多くの研究が重ねられてきました。
マインドフルネス瞑想は、注意の向け方や感情の調整、自分自身への気づきといった働きに関わると考えられており、脳の特定の部位に変化が生じることも分かってきています。
ただし、こうした従来の研究の多くは、脳の個々の部位を個別に調べるものであり、それらをつなぎ合わせて全体としての仕組みを説明することは難しいままでした。
近年では、脳の複数の領域が連携して働く「ネットワーク」として捉える視点が、この課題への糸口になると考えられ始めています。
しかし、マインドフルネス瞑想の訓練が、脳内ネットワークに与える影響を調べた研究は、これまで多くありませんでした。
そこで研究チームは、瞑想の経験がない健康な成人を対象に、1ヶ月間のマインドフルネス瞑想訓練による「脳内の複数のネットワーク間のつながり」への影響を調べました。
調査方法:「瞑想訓練」と「健康情報プログラム」の比較検証
対象
- 対象者:瞑想経験のない健康な成人46人(女性23人)
- 参加条件:18~60歳 / 右利き / 過去の瞑想経験がごく少ない成人
- 訓練期間:31日間
- 検査間隔:訓練前後で平均約41日
調査条件
- 瞑想訓練群(20人):31日間のマインドフルネス瞑想プログラムを、オンラインで1日10~15分実施。認定指導者の監修のもと、毎日誘導瞑想を行った
- 対照群(26人):同じく31日間で、瞑想とは無関係な健康関連トピックの音声や動画コンテンツに触れた
なお、年齢や性別、教育年数、体格、喫煙、飲酒、運動量について、両グループの参加者の間に大きな違いはありませんでした。
測定方法
- マインドフルネス:日常生活におけるマインドフルネスに関する15項目の質問紙に、訓練の前後で回答してもらう形で評価
- 脳のつながり方:訓練の前後に安静時の脳の状態を調べる画像検査(MRI)を行い、脳内ネットワーク間のつながりの変化を評価
得られた画像データは、まずネットワーク抽出解析にかけられ、脳全体の活動パターンから意味のあるまとまりが自動的に取り出されました。
その上で、以下の3種類の方法でつながり方の変化を調べています。
- 静的結合性解析で、訓練前後の平均的なつながりの強さを比較する方法
- 動的結合性解析で、つながり方の変化を追跡する方法
- シードベース結合性解析で、特定のネットワークを基準に脳全体とのつながりを調べる方法
結果:脳内ネットワーク間のつながりへの影響
注意に関わるネットワーク間のつながりの変化
動的結合性解析では、複数ある結合パターンのうち特定のパターンにおいて、以下の変化が見られました。
- spDMNとdSNの結合:瞑想訓練群で明確に強まった。対照群では変化なし。
- spDMNとinsSNの結合:瞑想訓練群で明確に強まった。対照群では変化なし。
シードベース結合性解析でも、dSNを基準にした場合に、DMNに関わる領域、およびCENに関わる領域との間で、同様の結合の強まりが確認された。
また、参加者の年齢を考慮した解析でも、これらの結果に変化はなかった。
このように、複数の異なる解析方法で一貫して確認されたことから、spDMNとSN(dSN・insSN)の間、およびSNとCENの間のつながりが、瞑想訓練を通じて強まった可能性があります。
言語や思考に関わる領域とのつながりの変化
シードベース結合性解析で、spDMNを基準にした場合に、言語や思考に関わる領域との間で結合の強まりが見つかった
変化が見られなかった項目
- 静的結合性解析では、明確な変化は見られなかった
- 参加者自身が回答したマインドフルネスの質問紙(MAAS)スコアは、瞑想訓練群でわずかに低下し、対照群でわずかに上昇したが、明確な差ではなかった
考察:研究結果の解釈と限界点
この結果から言えること
- DMNとSNのつながりは、瞑想訓練によって強まった
- SNとCENのつながりも強まった
- DMNと言語や思考に関わる領域とのつながりも強まった
- 平均的なつながりの強さを比較した解析では、変化が検出されなかった
- 参加者自身が回答したマインドフルネスの自覚には、明確な変化はなかった
この結果だけでは言えないこと
- 瞑想が変化を直接引き起こしたという因果関係は証明されていない
- 対象者は46人と限られており、より幅広い人にも同じ結果が当てはまるとは限らない
- 対象は18~60歳の健康な成人のみで、高齢者でも同様の結果になるとは限らない
- 効果が訓練終了後も続くかどうかは、検証されていない
- 安静時の脳の状態を調べたものであり、日常生活での注意力や気持ちの変化を直接調べたものではない
- 質問紙によるマインドフルネスの自覚に変化がなかった理由は、この研究だけでは確認できない
総括:脳内ネットワークが示す新たな視点
今回の研究では、瞑想が初めての人でも、1ヶ月間続けることで、注意や気づきに関わる脳領域のつながりが強まることを示しました。
さらに、言語や思考に関わる領域とのつながりにも、同様の変化が見られました。
これらの変化は、複数の解析方法を通じても一貫して確認されています。
一方で、参加者自身の自覚には、明確な変化が見られませんでした。
つまり、瞑想によって脳内で変化が起きたとしても、本人がそれをすぐに実感できるとは限らないということです。
この変化と自覚の違いが何を意味するのかは、今回の研究だけでは十分に説明できません。
また、対象は瞑想の経験がほとんどない健康な成人46人に限られており、より多くの人や異なる年代でも同じ結果が得られるかどうかは、今後の検証を待つ必要があります。
それでも今回の研究は、瞑想を始めたばかりの人の脳にも、1ヶ月という期間で何らかの変化が起こる可能性を示した点に意味があります。
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※本記事は、国際的な学術誌『Scientific Reports』に掲載された海外の査読済み論文および一次研究データに基づき、科学的エビデンスを確認した上で執筆されています。
論文情報
- 公開日:2022年8月2日
- 研究機関:ミュンヘン工科大学附属クリニクム・レヒツ・デア・イザール / ミュンヘン工科大学脳画像研究センター / ミュンヘン大学(LMU) / ハイデルベルク大学病院
- 掲載誌:Scientific Reports
- 論文:「 Mindfulness meditation increases default mode, salience, and central executive network connectivity 」
資金提供
資金提供元:本研究は、ドイツ連邦教育研究省(BMBF)から資金提供を受けて行われました。
利益相反:著者の一人は、本研究で用いられたオンライン瞑想訓練プログラムを、商業サービスとして利用できるようにしています。他の著者に利益相反はありません。




