
※この記事は 約3分 で読めます。
瞑想を長年続けている人の脳には、どのような違いがあるのでしょうか。
瞑想には、気持ちを落ち着かせたり、集中力を高めたりする効果があるとされています。
スペイン・ポンペウ・ファブラ大学の研究チームは、瞑想の熟練者と未経験者の脳を比較したところ、脳の機能と神経回路に違いがみられ、特に機能面で大きな差があることが分かりました。
この記事を読んでわかること
- 瞑想の熟練者は未経験者と比べて、脳の「機能」に大きな違いがあった
- 脳の「神経回路」には、一部で違いがあった
- 瞑想との因果関係には、さらなる検証が必要
本記事は、科学的知見や専門家の知見、研究データの紹介を目的としており、医学的アドバイスではありません。
診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。
また、本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。最新の情報については、必ずご自身でご確認ください。
用語解説
受け取った視覚情報から、形・色・動きなどの要素を分析し、対象の認識を行う領域です。
外部環境の情報を評価し、恐怖や不安などの情動反応(感情の動き)を生み出す領域です。
身体の各感覚情報(においを除く)を受け取り、大脳皮質の該当する専門領域へと振り分ける「中継領域」です。
大脳皮質からの運動計画を受け取り、不必要な動きを抑制することで、骨格筋の運動を円滑に調節する領域です。
随意運動(意図的な動き)を実行するため、皮質脊髄路を通じて、全身の筋肉へ直接運動指令を出力する領域です。
視線を素早く移動させる眼球運動(サッケード)の指令を制御する領域です。
公開日:2022年5月6日
掲載誌:Brain Structure and Function
論文:「 Meditation-induced effects on whole-brain structural and effective connectivity 」

著者:SHO|鍼灸師
豪華客船の専属鍼灸師として、40ヶ国160都市以上を巡り、世界中のクライアントを治療してきた経験を持つ治療家。
瞑想による脳の変化を、コンピューター技術が解き明かす
「心は変えられるものであり、瞑想はそのための手段である」
世界で最も知られる仏教指導者の一人、第14世ダライ・ラマは、2015年の著書の中でこのように述べています。
これまでの研究では、瞑想の熟練者の脳には違いがみられることが報告されていますが、これらの違いの多くは、脳の特定の部位や神経回路、活動パターンを個別に調べたものであり、脳の機能と構造を統合して捉えた研究はほとんどありませんでした。
そこで今回の研究では、瞑想の熟練者と未経験者を対象に、MRI解析による脳のデータを、機械学習で分析し、瞑想が脳の機能や構造に与える影響を調べました。
熟練者の脳の違いの正体は、脳の「神経回路」ではなく「機能」にあった
研究の結果、脳の機能において、安静時は視覚や体の状態に関わる部位(視覚野・扁桃体・視床・被殻など)に違いが見られ、瞑想時は注意や判断に関わる部位で違いが確認されました。
つまり、熟練者になると、瞑想をしていない普段の状態でも、視覚や感情、体の習慣的な反応に関わる脳の機能に違いがあり、瞑想をしている間はそれに加えて、注意や判断に関わる部位の機能にも違いがあると示唆されます。
しかし、神経回路を調べると、その違いは体の動きや姿勢、視線のコントロールに関わる「左半球のごく一部の経路(体性運動領域と被殻、体性運動領域と前頭眼野、視覚領域と被殻)」に限られていました。
ただし、これは熟練者と未経験者を比較しただけの研究であり、瞑想を続けた結果として脳の機能が変わったと証明されたわけではありません。
気持ちが落ち着いても、脳が変わったとは限らない
今回の研究では、瞑想の熟練者は未経験者と比べて、脳の機能に大きな違いがありました。
安静時には視覚や感情、体の習慣的な反応に関わる部位に違いが見られ、瞑想時には注意や判断に関わる部位に違いが確認されています。
しかし、実際に神経回路として違いが確認されたのは、体の動きや姿勢、視線のコントロールに関わる一部の経路に限られていました。
つまり、神経回路まで変化していれば、それは脳によりしっかりと定着した変化だと言えますが、瞑想の効果としてイメージされやすい「気持ちを落ち着かせる」「集中力を高める」に関わる部分は、そこまでの変化とは言い切れません。
▼ 関連知識 ▼
海外論文の検索方法|一次情報へアクセスする4ステップ
SNSに真偽の定かでない健康情報が溢れる現代。海外の一次情報(論文)にアクセスし、その信頼性を見極める4ステップを解説します。流れてくる情報を待つのではなく、翻訳機能やデータベースの活用法を学び、自ら読み解くスキルを身につけましょう。
※本記事は、国際的な学術誌『Brain Structure and Function』に掲載された海外の査読済み論文および一次研究データに基づき、科学的エビデンスを確認した上で執筆されています。
詳しい調査方法が気になる方は、こちらもご覧ください
人数:瞑想の熟練者19名・未経験者19名(年齢・性別・教育水準に有意差なし)
平均年齢:瞑想の熟練者39.8歳・未経験者39.75歳
瞑想の経験:瞑想の熟練者は1000時間超・1日1時間超の実践歴、未経験者はなし
測定条件:安静状態(約15分・画面中央の十字を見つめながら、何も考えないようにする) / 瞑想状態(約15分・呼吸に注意を向ける集中型瞑想「アーナーパーナサティ」)
測定方法:MRIによる脳活動記録(機能) / MRIによる神経線維の記録(構造)
解析モデル:機能面は、脳全体の活動をコンピューター上で再現するモデル「MOU-EC」 / 構造面は、脳の神経ネットワークを分析するための専門的な統計技術「NBS」
研究機関:国際共同研究(スペイン(Universitat Pompeu Fabra他) / ブラジル / ドイツ / オーストラリア)
資金提供元:EUのHuman Brain Project、スペインのCatalan Agency for Management of University and Research Grants(カタルーニャ大学・研究助成管理機関)ほか、複数の公的研究助成機関
利益相反:著者らは利益相反がないことを申告しています。





