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毎日何気なく口にしているコーヒーや紅茶が、実は将来の記憶力とも関係しているとしたら、気になる方も多いのではないでしょうか。
43年間にわたって追跡された大規模な研究により、カフェイン入りコーヒーや紅茶を多く摂取している人ほど、認知症のリスクが低い傾向にあることが示されました。
この結果は、日常的にコーヒーや紅茶を飲む多くの方にとって、関心の高いテーマといえます。
この記事を読んでわかること
- カフェイン入りのコーヒーや紅茶を飲む人ほど、認知症のリスクが低い傾向があった
- カフェインの入っていないコーヒーには、こうした関連は見られなかった
- 関連が最も強くみられたのは、1日2~3杯程度の適度な摂取量
※本記事は、科学的知見や専門家の知見、研究データの紹介を目的としており、医学的アドバイスではありません。
診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。
また、本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。最新の情報については、必ずご自身でご確認ください。
用語解説
コーヒーや紅茶、緑茶などに含まれる成分。覚醒作用があることで知られていますが、今回の研究では、脳の健康との関わりの面でも注目されています。
コーヒーや紅茶をはじめ、多くの植物性食品に含まれる成分の総称です。抗酸化作用を持つとされ、体を酸化ストレスから守る働きが注目されています。
記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障が出るようになった状態を指します。加齢に伴って発症リスクが高まることが知られています。
体の動きに関わる神経が徐々に障害されていく病気です。今回の研究では、対象者を選ぶ際の除外条件の一つとして扱われています。
背景:未検証だった「カフェインの有無」と認知症の関係
認知症は、ある日突然始まるものではなく、本人が「もの忘れが増えた」と自覚する段階から始まり、やがて臨床的に認知症と診断される段階へと進んでいきます。
治療の選択肢が限られているうえ、既存の治療法には好ましくない影響が生じる可能性も指摘されており、発症前の段階でどう予防するかが重要な課題となっています。
こうした中、日々の食事に含まれる成分は、自分で調整できる要因の一つとして注目を集めてきました。
コーヒーには、カフェインやポリフェノールといった生理活性のある成分が含まれており、これらが体内の酸化ストレスや炎症を和らげることで、脳を守る方向に働く可能性があると考えられています。
これまでにも、コーヒーやカフェインの摂取と、脳の健康との関係を調べた研究はいくつも行われてきましたが、その結果は一致していませんでした。
摂取量が多いほどリスクが高まることを示す研究がある一方、ある程度の量で頭打ちになりながら予防的な効果を示す研究もあり、摂取量と効果の関係は研究によって異なっていました。
加えて、これまでの研究の多くは一時点のみの食事調査や短い追跡期間にとどまっており、長期的な影響を見極めることが難しいという課題もありました。
また、もの忘れの自覚から、認知症の診断に至るまでの一連の経過を通して調べた研究もほとんどなく、さらに、カフェインが入ったコーヒーとカフェインを含まないコーヒーを区別して調べた研究も、これまでほとんどありませんでした。
そこで研究チームは、認知症の発症だけでなく本人の自覚症状や検査で測定される認知機能まで含めて、カフェインの有無によって、コーヒーや紅茶の摂取が将来の記憶力にどう関係するのかを調べました。
調査方法:男女別の追跡調査による「カフェイン」と「記憶力」の検証
本研究は、女性を対象とした「Nurses’ Health Study」(1976年開始)と、男性を対象とした「Health Professionals Follow-up Study」(1986年開始)という、2つの大規模な長期追跡調査のデータを組み合わせて行われました。
また、研究開始の時点でがん、パーキンソン病、認知症のいずれかがあった人や、1日あたりの食事から摂取するエネルギー量が極端に多い、または少ないと報告していた人などは、対象から除外されました。
| 職業 / 性別 | 登録時の年齢 | 解析人数 | 解析期間 |
|---|---|---|---|
| 看護師 / 女性 | 30~55歳 | 86,606人 | 1980~2023年 |
| 医療従事者 / 男性 | 40~75歳 | 45,215人 | 1986~2023年 |
摂取量の調べ方
摂取量については、以下の3つを対象に、食事の内容を尋ねる質問票を用いて2~4年ごとに調べられました。
- カフェイン入りコーヒー
- カフェインレスコーヒー
- 紅茶
カフェインの摂取量は、コーヒーや紅茶に加え、炭酸飲料やチョコレートなど、カフェインを含む複数の飲食物の摂取量をもとに算出されました。
測定方法
- 認知症:死亡記録および、医師による診断をもとに特定
- 主観的な認知機能:記憶力や注意力などに関する6~7項目の質問(「はい」「いいえ」形式)への回答をもとにスコア化し(0~7点)、3点以上を該当例と定義
- 客観的な認知機能:女性を対象とした調査のうち、70歳を超える17,139人を対象に、電話による記憶力や認知力の検査を実施(男性を対象とした調査では未実施)
解析にあたっては、年齢や1日の総エネルギー摂取量など基本的な要因のみを調整した場合と、生活習慣や食事の質、持病の有無なども含めて幅広く調整した場合の、2通りの方法で結果を確認しました。
また、年齢や喫煙状況、体格などによって、コーヒーや紅茶と記憶力との関連の強さに違いがあるかどうかも確認されました。
結果:「コーヒーと紅茶」による記憶力への影響
今回の解析対象は131,821人で、最長43年間にわたり追跡が行われました。
この間に、11,033件の認知症の新規発症が確認されています。
カフェイン入りコーヒーの摂取量が最も多いグループでは、1日あたりの摂取量は女性で4.5杯程度、男性で2.5杯程度でした。
認知症リスクとの関連
カフェイン入りコーヒーと紅茶それぞれについて、摂取量が最も少ないグループと最も多いグループを比較すると、以下のような差がみられました。
| 飲み物 | 摂取量が少ない | 摂取量が多い |
|---|---|---|
| カフェイン入りコーヒー | 330件 | 141件 |
| 紅茶 | 321件 | 201件 |
どちらの飲み物も、よく飲む人ほど発症率が低くなっていました。
一方、カフェインの入っていないコーヒーの摂取量については、こうした関連はみられませんでした。
主観的な認知機能との関連
もの忘れについて本人が自覚しているかどうかを調べたところ、認知症でみられたのと同様の傾向が確認されました。
カフェイン入りコーヒーや紅茶をよく飲んでいる人ほど、もの忘れを自覚している人の割合が低くなっていました。
一方、カフェインの入っていないコーヒーだけは逆に、よく飲んでいる人の方が、もの忘れを自覚している人の割合がやや高くなっていました。
客観的な認知機能への影響
女性を対象とした調査に限り、電話による記憶力・認知力検査を用いた評価も行われました。
- カフェイン入りコーヒー:記憶力検査(TICS)のスコアがわずかに高い(0.11点差)
- 紅茶:記憶力検査のスコアに加え、言語による記憶力や全般的な認知機能のスコアも高い
- カフェインレスコーヒー:言語による記憶力のスコアはむしろ低い
なお、カフェイン入りコーヒーについて、全般的な認知機能スコアの差はごくわずかで、明確な差とは言えませんでした。
カフェインそのものとの関連
コーヒーや紅茶に含まれるカフェインの総摂取量で見ても、同じ傾向が確認されました。
カフェインを多く摂取していたグループは、ほとんど摂取していなかったグループと比べて、認知症の発症率が低くなっていました。
摂取量の目安について
摂取量が多ければ多いほど良い、という単純な結果ではありませんでした。
1日あたり2~3杯程度のカフェイン入りコーヒー、または1~2杯程度の紅茶を飲んでいる場合に、認知症のリスクが最も低くなっており、それ以上多く飲んでも、さらなる違いはみられませんでした。
カフェインの入っていないコーヒーについては、摂取量と認知症関連との間に、はっきりとした関係はみられませんでした。
考察:研究結果の解釈と限界点
この結果から言えること
- 先行研究とも、方向性が一致する結果と考えられる
- 摂取量が少量から中程度までは効果が強まり、それを超えるとほぼ横ばいになるという関係がみられた
- カフェインの分解には限界があり、多く飲んでも効果が頭打ちになる傾向と矛盾しない
- カフェイン入りとカフェインレスでは明確に異なる結果がみられ、脳を守る働きの中心はカフェインそのものである可能性が考えられる
- 神経の伝達や炎症、血糖の調整など、複数の仕組みで脳を守っている可能性も指摘されている
- 記憶力検査でみられた差はわずかで、日常生活の中で本人が実感できるほどの変化ではなかった
この結果だけでは言えないこと
- 検査によって差が出たものと出なかったものがあり、その理由までは分からない
- カフェインレスコーヒーで逆の結果が出た理由が、飲料自体の影響か、もともとの体質の違いかは区別できない
- 紅茶の種類やコーヒーの淹れ方による違いまでは調べられていない
- コーヒーや紅茶が記憶力を良くしたのか、記憶力が良い人ほど多く飲む傾向にあるだけなのかは、この研究だけでは判断できない
- 対象が看護師または医療従事者中心の集団であるため、他の人にも同じ結果が当てはまるかは分からない
総括:カフェインと将来の記憶力をめぐる新たな知見
今回の研究は、40年を超える長期の追跡と、繰り返しの食事調査という他に類をみない規模で行われ、カフェイン入りのコーヒーや紅茶を飲む習慣が、将来の認知症リスクの低さと結びついていることを示しました。
特に、1日2~3杯程度という無理のない量ですでに関連がみられ、それ以上多く飲んでも差が広がらないという関係も明らかになりました。
一方でカフェインの入っていないコーヒーには、こうした関連はみられず、鍵を握っているのがカフェインという成分そのものである可能性を示す結果となりました。
もちろん、これは観察に基づく研究であり、コーヒーや紅茶を飲むことで認知症のリスクを軽減できると証明されたわけではありません。
対象も看護師または医療従事者が中心であり、誰にでも同じように当てはまるとは限らない点にも留意が必要です。
それでも、日々何気なく口にしているコーヒーや紅茶という身近な飲み物が、将来の脳の健康と関わっている可能性を示した点は、今後さらに研究が積み重ねられていくべき重要な手がかりといえます。
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※本記事は、国際的な学術誌『JAMA』に掲載された海外の査読済み論文および一次研究データに基づき、科学的エビデンスを確認した上で執筆されています。
論文情報
- 公開日:2026年2月9日
- 研究機関:ハーバード大学 T.H. Chan School of Public Health / Brigham and Women’s Hospital
- 掲載誌:JAMA
- 論文:「 Coffee and Tea Intake, Dementia Risk, and Cognitive Function 」
資金提供
資金提供元:本研究は、米国国立衛生研究所(NIH)から資金提供を受けて行われました。
利益相反:著者のHu氏のみが、Analysis Group社から研究支援を受けたことが開示されています。




