
※この記事は 約3分 で読めます。
ケガや手術の傷跡が、思ったよりも残ってしまった経験はないでしょうか。
ローズマリーは、「傷跡を目立たなくする」あるいは「肌を整える」として人気を集めています。
ペンシルベニア大学などの研究チームによるマウスを使った実験では、ローズマリー抽出物とその主成分であるカルノシン酸が、傷の回復を促進する可能性が示されました。
この記事を読んでわかること
- ローズマリー抽出物とその主成分カルノシン酸が、傷の回復を促進する可能性がある
- 効果には、皮膚の感覚神経にある受容体「TRPA1」の活性化が関わっていた
- 効果は塗布した部位に限られ、離れた部位には及ばなかった
本記事は、科学的知見や専門家の知見、研究データの紹介を目的としており、医学的アドバイスではありません。
診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。
また、本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。最新の情報については、必ずご自身でご確認ください。
用語解説
痛みや刺激を感知する神経の受容体の一種。ローズマリーによる傷の治り方の変化に、中心的な役割で関わっていることが今回の研究でわかった。
ローズマリーの葉に多く含まれる成分の一つ。
公開日:2025年10月23日
掲載誌:JCI Insight
論文:「 Carnosic acid in topical rosemary extract enhances skin repair via TRPA1 activation 」

著者:SHO|鍼灸師
豪華客船の専属鍼灸師として、40ヶ国160都市以上を巡り、世界中のクライアントを治療してきた経験を持つ治療家。
傷跡が残る治り方と、残らない治り方の違いとは
多くの傷は跡を残したまま治りますが、同じような傷を負っても、傷跡がほとんど残らずに治る場合もあります。
これまでは、皮膚の感覚神経にある「TRPA1」という受容体が、傷の治り方に影響していると言われていました。
また、薬剤でこの受容体を活性化すると、同じように組織の回復を人為的に促せる可能性も確認されています。
そして、ハーブや植物には、古くから治療に使われてきた歴史があり、現在使われている薬剤の25%ほどは植物由来とも言われており、中でもローズマリーは、傷や肌のケアに使われてきた植物として知られています。
そこで研究チームは、マウスを対象に、ローズマリー抽出物とその主成分カルノシン酸を含むクリームを使い、皮膚の傷の治り方とTRPA1受容体の活性化との関連を調べました。
ローズマリーが持つ効果の正体は、痛みを感じる「神経」にあった
小さな穴をマウスの耳に開け、ローズマリー抽出物を含むクリームを1か月間毎日塗り続けたところ、有効成分を含まないクリームを塗った場合に比べて、傷口が閉じただけでなく、毛包や皮脂腺、軟骨といった組織の構造まで、元の状態に近い形で回復していました。
カルノシン酸だけを塗った場合は、傷口が閉じた割合が平均で約9割に達し、ローズマリー抽出物とほぼ同じ効果が確認されています。
そのため、その効果の正体は、ローズマリーに含まれる一つの成分「カルノシン酸」である可能性が示唆されています。
また、カルノシン酸は、皮膚の感覚神経にある「TRPA1」という受容体を活性化する働きを持っていました。
実際に、このTRPA1を持たないマウスでは、同じクリームを塗っても穴は閉じきらず、効果はほとんど確認できませんでした。
ただし、傷の治り方が改善したのは、マウスでの実験結果であり、効果もクリームを塗った部分に限られています。
TRPA1が活性化される仕組み自体は、ヒト由来の培養細胞でも確認されていますが、ヒトの皮膚で同じ効果が得られるとは、まだ確認されていません。
科学的な裏付けができても、今すぐ試していいわけではない
今回の研究では、ローズマリーの成分である「カルノシン酸」が、科学的に効果があることが確認されました。
ミントやオレガノなど、同じTRPA1という受容体を刺激する植物は他にもありますが、「植物由来だから効く」のではなく、その成分の効果を一つひとつ確かめることの意味を、この研究は示しています。
ただし、あくまでマウスを使用した実験段階のデータであり、市販のローズマリー精油などをそのまま傷口に塗ると、肌荒れや炎症などの深刻なトラブルを引き起こすリスクがあるため厳禁です。
▼ 関連知識 ▼
皮膚の構造とは?公的基準に基づく「表皮の4階層」と「生体防御システム」の解説
表皮の4つの階層構造、肌の生体防御システムである「バリア機能」と「ターンオーバー」を公的基準に基づき解説。日本皮膚科学会や厚生労働省のデータに基づく、皮膚管理のための基礎知識です。
海外論文の検索方法|一次情報へアクセスする4ステップ
SNSに真偽の定かでない健康情報が溢れる現代。海外の一次情報(論文)にアクセスし、その信頼性を見極める4ステップを解説します。流れてくる情報を待つのではなく、翻訳機能やデータベースの活用法を学び、自ら読み解くスキルを身につけましょう。
※本記事は、国際的な学術誌『JCI Insight』に掲載された海外の査読済み論文および一次研究データに基づき、科学的エビデンスを確認した上で執筆されています。
詳しい調査方法が気になる方は、こちらもご覧ください
対象:野生型マウス(C57BL/6J)と皮膚の感覚神経だけTRPA1が働かないマウス(nTRPA1-KO) / 生後6〜8週 / 雄・雌の両方を使用
陰性対照:TRPA1を活性化しないコリアンダー抽出物
実験構成
①耳に穴を開けるモデル / ②背中の円形創傷モデル / ③全身への影響の検証 / ④培養細胞を使ったTRPA1活性化の測定 / ⑤TRPA1欠損マウスとの比較
測定方法
①実体顕微鏡で傷のサイズや再上皮化の速さを測定 / ②染色で毛包・皮脂腺・軟骨の回復を確認 / ③コラーゲン染色で線維化を測定 / ④TRPA1関連遺伝子の発現量を測定
研究機関:ペンシルベニア大学・ユタ大学・退役軍人省医療センター
資金提供元:米国国立衛生研究所(NIH)・米国退役軍人省(VA)
利益相反:著者らは利益相反がないことを開示しています。






