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身体活動強度の単位である「METs(メッツ)」は、日常生活における動作や運動の負荷によって異なる値を示します。
本記事は、国や公的機関(厚生労働省など)が提示する厳格なデータに基づき、身体活動強度の定義や算定公式、身体活動別のMETs表、および運動強度に伴うエネルギー代謝メカニズムを整理したものです。
この記事を読んでわかること
- 公的機関の基準に基づく「身体活動強度の定義と数値基準」
- 医学的根拠に基づく「身体活動強度の分類」
- 人体の中で起こっている「クロスオーバー概念」
※本記事は公的機関のデータや科学的エビデンスの紹介を目的としており、医学的アドバイスではありません。診断や治療については必ず専門医にご相談ください。
また、本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。最新の情報については、必ずご自身でご確認ください。
身体活動強度の定義
身体活動強度(METs:Metabolic Equivalents)とは、運動や日常の活動時のエネルギー消費量が、安静時の何倍に当たるかを示す国際的な単位です。
厚生労働省の指標においても、座って静かに休憩している状態(安静座位)の代謝を1.0 METsと定義し、これを基準としてあらゆる身体活動の強度が数値化されています。
身体活動強度(METs)を用いたエネルギー消費量の算定公式
個人の「エネルギー消費量(予測値)」を割り出すためのもので、身体活動強度(METs)に体重と活動時間を掛け合わせて計算します。
例)3.0 METsの活動を、体重70.0kgの成人が30分(0.5 hour)実施した場合:3.0 METs × 70.0kg × 0.5 hour= 105 kcal
エネルギー消費量(kcal) = 身体活動強度(METs) × 体重(kg) × 活動時間(hour)
METs基準値の分類
一般生活における代表的な活動強度は以下のように分類されています。
また、厚生労働省などの公的指標では、健康増進のために3.0 METs以上の活発な身体活動を行うことが推奨されています。
生活活動におけるMETs基準値
生活活動とは、日常生活における労働や家事、通勤・通学などの目的を持った身体活動を指します。
| METs | 身体活動 |
|---|---|
| 1.8 | 立位(会話、電話、読書) / 皿洗い |
| 2.0 | ゆっくりした歩行(平地、53m/分未満、散歩または家の中) / 料理や食材の準備(立位、座位) / 洗濯 / 子どもを抱えながら立つ / 洗車・ワックスがけ |
| 2.2 | 子どもと遊ぶ(座位、軽度) |
| 2.3 | ガーデニング(コンテナを使用する) / 動物の世話 / ピアノの演奏 |
| 2.5 | 植物への水やり / 子どもの世話 / 仕立て作業 |
| 2.8 | ゆっくりした歩行(平地、53m/分) / 子ども・動物と遊ぶ(立位、軽度) |
| 3.0 | 普通歩行(平地、67m/分、犬を連れて) / 電動アシスト付き自転車に乗る / 家財道具の片付け / 台所の手伝い / 梱包 / ギター演奏(立位) |
| 3.3 | カーペット掃き / フロア掃き / 掃除機 / 身体の動きを伴うスポーツ観戦 |
| 3.5 | 歩行(平地、75~85m/分、ほどほどの速さ、散歩など) / 楽に自転車に乗る(8.9km/時) / 階段を下りる / 軽い荷物運び / 車の荷物の積み下ろし / 荷づくり / モップがけ / 床磨き / 風呂掃除 / 庭の草むしり / 車椅子を押す / スクーター(原付)・オートバイの運転 |
| 4.0 | 自転車に乗る(≒16km/時未満、通勤) / 階段を上る(ゆっくり) / 動物と遊ぶ(歩く/走る、中強度) / 高齢者や障がい者の介護(身支度、風呂、ベッドの乗り降り) / 屋根の雪下ろし |
| 4.3 | やや速歩(平地、93m/分) / 苗木の植栽 / 農作業(家畜に餌を与える) |
| 4.5 | 耕作 / 家の修繕 |
| 5.0 | かなり速歩(平地、107m/分) / 動物と遊ぶ(歩く/走る、強度) |
| 5.5 | シャベルで土や泥をすくう |
| 5.8 | 子どもと遊ぶ(歩く/走る、強度) / 家具・家財道具の移動・運搬 |
| 6.0 | スコップで雪かきをする |
| 7.8 | 農作業(干し草をまとめる、納屋の掃除) |
| 8.0 | 運搬(重い荷物) |
| 8.3 | 荷物を上の階へ運ぶ |
| 8.8 | 階段を上る(速く) |
運動・スポーツにおけるMETs基準
運動とは、体力の維持や増進を目的として意図的に実施される身体活動を指します。
| METs | 身体活動 |
|---|---|
| 2.3 | ストレッチング |
| 2.5 | ヨガ / ビリヤード |
| 2.8 | 座って行うラジオ体操 / 楽な強度で行う筋トレ(腹筋運動) |
| 3.0 | ボウリング / バレーボール / 社交ダンス(ワルツ、サンバ、タンゴ) / ピラティス / 太極拳 |
| 3.5 | 自転車エルゴメーター(30~50ワット) / 体操(軽・中等度) / ゴルフ(手引きカートを使って) |
| 3.8 | ほどほどの強度で行う筋トレ(腕立て伏せ・腹筋運動) |
| 4.0 | 卓球 / パワーヨガ / ラジオ体操第1 |
| 4.3 | やや速歩(平地、93m/分) / ゴルフ(クラブを担いで運ぶ) |
| 4.5 | テニス(ダブルス) / 水中歩行(中等度) / ラジオ体操第2 |
| 4.8 | 水泳(ゆっくりとした背泳) |
| 5.0 | かなり速歩(平地、107m/分) / 野球 / ソフトボール / サーフィン / バレエ(モダン、ジャズ) / 筋トレ(スクワット) |
| 5.3 | 水泳(ゆっくりとした平泳ぎ) / スキー / アクアビクス |
| 5.5 | バドミントン |
| 6.0 | ゆっくりとしたジョギング / ウェイトトレーニング(高強度、パワーリフティング、ボディビル) / バスケットボール / 水泳(のんびり泳ぐ) |
| 6.5 | 山を登る(0~4.1kgの荷物を持って) |
| 6.8 | 自転車エルゴメーター(90~100ワット) |
| 7.0 | ジョギング / サッカー / スキー / スケート / ハンドボール |
| 7.3 | エアロビクス / テニス(シングルス) / 山を登る(約4.5~9.0kgの荷物を持って) |
| 8.0 | サイクリング(約20km/時) / 激しい強度で行う筋トレ(腕立て伏せ・腹筋運動) |
| 8.3 | ランニング(134m/分) / 水泳(クロール、46m/分未満) / ラグビー |
| 9.0 | ランニング(139m/分) |
| 9.8 | ランニング(161m/分) |
| 10.0 | 水泳(クロール、69m/分) |
| 10.3 | 武道・武術(柔道、柔術、空手、キックボクシング、テコンドー) |
| 11.0 | ランニング(188m/分) / 自転車エルゴメーター(161 ~ 200ワット) |
運動強度に伴うエネルギー代謝のメカニズム
身体活動の強度(METs)が高まると、筋肉の細胞内ではエネルギー源として使われる「糖質」と「脂質」の割合が切り替わります。
運動生理学では、この運動強度の上昇に伴って主要なエネルギー源の利用比率が変動する転換点を「クロスオーバー概念(Crossover Concept)」と呼びます。
クロスオーバー概念
人体のエネルギー供給における「クロスオーバー概念」の背景には、活動強度に応じて動員される「骨格筋の種類」と、細胞内での「代謝経路の変化」が関係しています。
▶︎低強度活動における「脂質優位」の代謝システム

デスクワークや通常の歩行など、3.0 METs未満の強度の低い活動時には、主に「遅筋(赤筋)」と呼ばれる筋線維が動員されます。
遅筋の細胞内には、エネルギーを産生するミトコンドリアが豊富に存在します。
この代謝システムでは、体内に取り込まれた酸素を利用しながら、主に脂質(脂肪酸)をゆっくりと分解しながら、細胞のエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)を持続的に生成します。
そのため、脂質の燃焼比率が圧倒的に高くなります。
▶︎高強度活動における「糖質優位」の代謝システム

ランニングや急な階段昇降など、METsの数値が急激に高まる活動になると、筋肉が瞬時に強い力を発揮する必要があるため、酸素の供給だけではエネルギー生成が追いつかなくなります。
このとき、瞬発力に優れた「速筋(白筋)」が優先的に動員されます。
この代謝システムでは、酸素を必要としない経路(解糖系)を使い、体内に蓄えられている糖質(グリコーゲン)を急速に分解して、短時間でATPを産生します。
結果として、糖質の利用比率が脂質を上回ることになります。
総括
- 身体活動強度(METs)とは、運動や日常活動時のエネルギー消費量が安静座位(1.0 METs)の何倍に当たるかを示す国際的な単位である。
- エネルギー消費量(予測値)は、「身体活動強度(METs) × 体重(kg) × 活動時間(hour)」の算定公式を用いて算出され、健康増進のために3.0 METs以上の活動が推奨されている。
- METs基準値には、生活活動(日常生活における労働や家事、通勤・通学など)と、運動・スポーツ(体力の維持や増進)の2つのカテゴリーに分類されており、それぞれの負荷ごとに具体的な数値が定められている。
- 運動強度が高まると、筋肉の細胞内で使われるエネルギー源の割合が切り替わり、この利用比率が変動する転換点を「クロスオーバー概念」と呼ぶ。
- 3.0 METs未満の低強度活動では、ミトコンドリアが豊富な「遅筋」が動員され、主に脂質を分解しながらATPを持続的に生成するため、脂質燃焼比率が高くなる。
- METsが急激に高まる高強度活動では、瞬発力に優れた「速筋」が優先的に動員され、糖質を急速に分解して、ATPを短時間で産生するため、糖質利用比率が脂質を上回る。
※本記事は、厚生労働省が策定した各種ガイドラインに基づき、科学的エビデンスを確認した上で執筆されています。
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