
※この記事は 約5分 で読めます。
日常生活におけるエネルギー消費の大きさを決定づける「身体活動レベル(PAL)」は、個人のライフスタイルや職業、運動習慣などによって異なる値を示します。
本記事は、国や公的機関(厚生労働省など)が提示する厳格なデータに基づき、身体活動レベルの定義や算定公式、ライフスタイル別の3区分、および身体活動時エネルギー消費量のメカニズムを整理したものです。
この記事を読んでわかること
- 公的機関の基準に基づく「身体活動レベルの定義と数値基準」
- 医学的根拠に基づく「身体活動レベルの分類」
- 人体の中で起こっている「非運動性熱産生(NEAT)」
※本記事は公的機関のデータや科学的エビデンスの紹介を目的としており、医学的アドバイスではありません。診断や治療については必ず専門医にご相談ください。
また、本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。最新の情報については、必ずご自身でご確認ください。
身体活動レベルの定義
身体活動レベル(PAL:Physical Activity Level)とは、厚生労働省の基準において、主に身体活動量の指標として定義されています。
これは、エネルギー消費量のもっとも正確な測定法である「二重標識水法」で測定された総エネルギー消費量を、1日あたりの基礎代謝量で割った指標です。
※二重標識水法(doubly labeled water method):アメリカやカナダの食事摂取基準でも採用されている測定法
総エネルギー消費量を構成する3つの要素
「1日の総エネルギー消費量」は、主に以下の3つの代謝システムで構成されています。
生命維持のために安静時でも消費されるエネルギー(全体の約60%)
食事をした後に代謝が上がり消費されるエネルギー(全体の約10%)
運動や日常生活での活動で消費されるエネルギー(全体の約30%)
算定公式の分類
厚生労働省のデータを用いた算定公式には、活用目的によって2つの計算方法があります。
身体活動レベル(PAL)の算定公式
個人の「活動レベルの倍率」を算出するためのもので、 実際に消費したすべてのエネルギーが、基礎代謝の「何倍」だったかを計算します。
例)総エネルギー消費が2,625 kcalで、基礎代謝が1,500 kcalの場合:2,625 ÷ 1,500 = 1.75
身体活動レベル(PAL) = 1日当たり総エネルギー消費量(kcal/日) ÷ 1日当たりの基礎代謝量(kcal/日)
推定エネルギー必要量(kcal/日)の算定公式
個人の「1日に必要なカロリー数(目標値)」を割り出すためのもので、基礎代謝量と身体活動レベル(倍率)を掛け合わせて計算します。
例)基礎代謝が1,500 kcalで、身体活動レベルが1.75 の場合:1,500 × 1.75 = 2,625
推定エネルギー必要量(kcal/日) = 基礎代謝量(kcal/日) × 身体活動レベル
身体活動レベルの判定基準
身体活動レベル(PAL)は、厚生労働省によって「レベルⅠ(低い)」「レベルⅡ(ふつう)」「レベルⅢ(高い)」の3つのカテゴリーに分類されています。
ライフスタイル別の全体マップと、各年齢階級における数値基準は以下の通りです。
ライフスタイル別の3区分
一般生活における活動の目安として、それぞれのレベルは以下のような状態を指します。
生活の大部分が座位(座った状態)であり、静的な活動が中心の場合。
デスクワーク中心の職業、移動や立ち歩きが極めて少ないライフスタイルがこれに該当します。
座位中心の仕事や生活であっても、通勤や買い物での歩行、家事、あるいは比較的軽いスポーツや趣味の運動を日常的に行う場合。
日本人の標準的な活動層として、最も大きな割合を占めます。
移動や立ち仕事が多い職業(流通業、サービス業、製造業、農業など)や、日常的に活発な運動習慣や高い強度のスポーツを行っている場合。
年齢階級別の基準値
厚生労働省は、エネルギー消費量の個人差に対応するため、各年齢階級における数値基準は以下のように定義されています。
| 年齢階級 | レベルⅠ (低い) | レベルⅡ (ふつう) | レベルⅢ (高い) |
|---|---|---|---|
| 15~17歳 | 1.55 | 1.75 | 1.95 |
| 18~29歳 | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
| 30~49歳 | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
| 50~69歳 | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
| 70歳以上 | 1.45 | 1.70 | 1.95 |
※年齢とともに基準値が変動するのは、加齢に伴う筋肉量の減少や、ライフスタイルの変化による身体活動パターンの差異を統計的なエビデンスに基づいて反映しているためです。
身体活動時エネルギー消費量のメカニズム
同じ体重や性別であっても、日々の過ごし方によって身体活動レベルに差が生まれる背景には、総エネルギー消費量の約30%を占める「身体活動時エネルギー消費量(kcal)」の生理的なメカニズムが関係しています。
非運動性熱産生(NEAT)
1日の「身体活動時エネルギー消費量」の個人差を決定づける大きな要因として、非運動性熱産生「NEAT」という仕組みがあります。

「NEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis)」とは、スポーツやジムでのトレーニングといった意図的な運動以外の、日常生活における家事や仕事中の立位、歩行、階段の昇降、さらには「貧乏ゆすり」などの微細な動作によって消費されるエネルギー代謝のことです。
人間が座っている状態から立ち上がると、重力に対抗して姿勢を保持するために、太ももや背中を中心に多くの「抗重力筋(骨格筋)」が収縮します。
この「立つ」「歩く」という細かな姿勢保持の連続だけで、筋肉のエネルギー消費は座っている状態よりも向上します。
特別な運動習慣がない人であっても、日常の身体活動の頻度が高い人は、このNEATの働きによって1日の「身体活動時エネルギー消費量」が増加し、「身体活動レベル」が引き上げられることが臨床研究で証明されています。
※1990年代後半から2000年代にかけて、マヨクリニック(Mayo Clinic)のジェームズ・レバイン(James Levine)博士らの研究によって、肥満者と非肥満者の「1日のエネルギー消費」の差の大部分が、運動ではなく「NEAT(日常の細かな活動)」の差によるものであることが実証されました。
総括
- 身体活動レベル(PAL)は、総エネルギー消費量を1日あたりの基礎代謝量で割った指標であり、厚生労働省の基準において、主に身体活動量の指標として定義されている。
- 1日の総エネルギー消費量は、基礎代謝量(全体の約60%)、食事誘発性熱産生(全体の約10%)、身体活動時エネルギー消費量(全体の約30%)の3つの代謝システムで構成されている。
- 厚生労働省のデータを用いた算定公式には、「身体活動レベル(PAL)の算定公式」と、「推定エネルギー必要量の算定公式」の2つがある。
- 身体活動レベルの判定基準は「低い(Ⅰ)」「ふつう(Ⅱ)」「高い(Ⅲ)」の3つのカテゴリーに分類され、一般生活における活動の目安やライフスタイルに応じて区分されている。
- 年齢階級別の基準値は、各年齢において「レベルⅠ / レベルⅡ / レベルⅢ」ごとに設定されており、加齢に伴う筋肉量の減少やライフスタイルの変化が統計的エビデンスに基づいて反映されている。
- 同じ体重や性別でも身体活動レベルに差が生まれる背景には、総エネルギー消費量の約30%を占める身体活動時エネルギー消費量の個人差を決定づける「非運動性熱産生(NEAT)」の生理的メカニズムが関係している。
- NEATは意図的な運動ではなく、家事や仕事中の立位、徒歩移動、姿勢維持のための抗重力筋(骨格筋)の収縮などによる日常的なエネルギー代謝であり、この頻度が高い人は身体活動時エネルギー消費量が増加し、結果として身体活動レベルが引き上げられる。
▼ 関連知識 ▼
基礎代謝量とは?公的基準に基づく「算定公式」と「エネルギー消費メカニズム」の解説
基礎代謝量の定義や基準値、算定基準、体内における組織別の消費比率を公的基準に基づき解説。厚生労働省のデータに基づく、代謝管理のための基礎知識です。
身体活動強度(METs)とは?公的基準に基づく「METs基準値」と「クロスオーバー概念」の解説
身体活動強度の定義や算定公式、METs基準値、およびクロスオーバー概念を公的基準に基づき解説。厚生労働省のデータに基づく、身体活動のための基礎知識です。
※本記事は、厚生労働省が策定した各種ガイドラインに基づき、科学的エビデンスを確認した上で執筆されています。



