親にADHDがあると、子どもにも遺伝するのか?|診断記録の比較検証

親子が手を繋ぎ、ビーチを歩いている様子

※この記事は 約4分 で読めます。

「ADHDは親から子どもに遺伝する」と、聞いたことはありませんか?

ADHDは遺伝の影響(遺伝的要因)が大きいと言われていますが、実際に診断された結果を見ると、どのような関係があるのでしょうか。

スウェーデンのカロリンスカ研究所などの研究では、親にADHDがある子どもは、ADHDと診断される割合が約4.5倍と多くなる傾向が見られた一方で、自閉症や不安障害、睡眠障害などの診断を受ける傾向もあることが確認されました。

  • 親にADHDがある子どもは、ADHDと診断される割合が約4.5倍と多くなる傾向が見られた
  • ADHD以外にも、自閉症や不安障害、睡眠障害などの診断を受ける傾向もあった
  • ADHDの遺伝率「約70~80%」は、親から子どもに遺伝する確率ではない

本記事は、科学的知見や専門家の知見、研究データの紹介を目的としており、医学的アドバイスではありません。
診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。
また、本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。最新の情報については、必ずご自身でご確認ください。

用語解説

「不注意・多動性・衝動性」を特徴とする神経発達症の一つです。精神疾患の診断基準である「DSM-5」では、これらの症状が6か月以上続いて日常生活に支障が出ていることや、症状が12歳までに現れていることなどが条件とされています。子どもの頃に気づかれることが多い一方で、成人になってから診断されることもあります。

病気や体質に関わる要因のうち、遺伝子の違いに由来するものを指します。単一の遺伝子の変化で起こる病気がある一方、心臓病、糖尿病、肥満など、多くの病気は、複数の遺伝子と、生活習慣や環境などの要因が関わります。

集団の中で見られる個人差のうち、遺伝的な違いによって説明できる割合のことです。双子(一卵性双生児と二卵性双生児)の比較などの統計的手法を用いて算出されます。「親から子どもに遺伝する確率」という意味ではありません。

「自閉スペクトラム症」とも呼ばれる神経発達症の一つです。人との関わりやコミュニケーションが難しいことや、行動や興味に強いこだわりや偏りがあることが特徴で、発達の早い時期から見られます。症状は軽度から重度まで幅があり、原因は十分に解明されていませんが、遺伝的な要因が関わることが多いとされています。

強い不安や恐怖が、日常生活に支障が出るほど強く、長く続く病気の総称で、近年は「不安症」とも呼ばれます。パニック障害・社交不安障害・全般性不安障害などが含まれます。不安を感じる対象や状況を避けるようになり、仕事や学業、人間関係に支障が出ることがあります。また、動悸やめまい、息苦しさなどの身体症状を伴うこともあり、気質やストレス、家族歴、脳機能など、複数の要因が影響し合うと考えられています。

睡眠に関連したさまざまな病気の総称です。「不眠症・過眠症・睡眠時随伴症・睡眠時無呼吸症候群」などが含まれます。

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著者:SHO|鍼灸師

豪華客船の専属鍼灸師として、40ヶ国160都市以上を巡り、世界中のクライアントを治療してきた経験を持つ治療家。

ADHD(注意欠如・多動症)は、遺伝的要因が約70~80%と言われています。

これは、双子を対象にした37件の研究レビュー(2019年)から報告された結果に基づく数字です。

ただし、この数字は「遺伝率」と呼ばれ、集団の中で見られる個人差のうち、遺伝で説明できる部分の割合を示す値です。

つまり、「ADHDの約70~80%が遺伝によるもの」という意味でも、「親から子どもに遺伝する確率」という意味でもありません。

そこで研究チームは、2000~2014年にスウェーデンで生まれた子ども約116万人を対象に、診断記録を用いて、親と子どものADHD(注意欠如・多動症)の関係性を調べました。

比較検証の結果では、親にADHDがある子どもは、ADHDと診断される割合が約4.5倍と多くなる傾向が確認されました。(母親がADHD:約5.0倍 / 父親がADHD:約4.3倍 / 両親ともにADHD:約7.0倍)

また、妊娠中の環境や、母親だけに関わる要因がADHDの主な理由であれば、親の性別で大きな違いが見られるはずですが、今回の結果からはそのような違いは見られませんでした。

さらに、ADHD以外の診断にも違いが見られ、精神や睡眠関連の診断「自閉症(約3.1倍)・不安障害(約2.5倍)・睡眠障害(約2.5倍)」などが多くなる傾向がありました。

ただし、これらは診断記録を比較したものなので、遺伝子そのものを調べた結果ではありません。

今回の結果では、親にADHDがある子どもは、ADHDと診断される割合が約4.5倍と多くなる傾向が見られ、ADHD以外では「自閉症・不安障害・睡眠障害」などの精神や睡眠関連の診断が多くなる傾向が確認されました。

これだけをみると、「やはりADHDは遺伝する」と思う人がいるかもしれません。

しかし、先行研究の遺伝率「約70~80%」と、今回の診断記録で見られた傾向は、どちらも「親から子どもに遺伝する確率」を示すものではありません。

また、親子は遺伝子だけでなく、家庭環境も共有しているため、今回の傾向だけでは遺伝によるものとは言えません。

それでも、今回の研究結果は、数値だけではなく、ADHDをさまざまな視点で読み解く手がかりになるでしょう。

「Medical Research」と書かれた紙と足関節のレントゲン、医療書、解剖模型が並んでいる画像

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※本記事は、国際的な学術誌『Molecular Psychiatry』に掲載された海外の査読済み論文および一次研究データに基づき、科学的エビデンスを確認した上で執筆されています。

詳しい調査方法が気になる方は、こちらもご覧ください

研究期間:2000年〜2020年12月31日
追跡期間:出生から、死亡・国外移住、または2020年12月31日まで(最長で約21年)
対象:スウェーデンで2000〜2014年に生まれた子ども 1,164,580人(親にADHDがある子ども 57,444人 / 親にADHDがない子ども 544,716人 / その他 562,420人)
参照データ:スウェーデンの全国登録(出生 / 患者 / 処方薬 / 家族関係 / 教育・就労の統計 / 死因 / 住民)
比較方法:親にADHDがある子ども1人に対し、親にADHDがない子どもを最大10人組み合わせ(子どもの性別と生まれた年、親の性別と生まれた年を同じにそろえて比較)
測定方法:患者登録と死因登録の診断コードで、24項目の診断を抽出
親のADHD条件:生涯の記録で、診断(国際疾病分類 ICD-9:314 / ICD-10:F90)または服薬がある人

診断結果

各項目は、1000人あたり1年間の診断人数(親にADHDあり / なし)

ADHD:21.98人 / 4.68人
自閉症:6.42人 / 1.83人
素行症:2.09人 / 0.47人
知的障害:1.33人 / 0.68人
チック症:1.38人 / 0.45人
不安障害:6.10人 / 2.34人
うつ病:3.80人 / 1.54人
事故によるけが(死亡を含む):65.77人 / 56.55人
暴力被害:1.11人 / 0.45人
転倒(死亡を含む):35.99人 / 32.62人
自傷:1.86人 / 1.10人
事故による中毒(死亡を含む):1.18人 / 0.60人
自殺関連行動(死亡を含む):1.88人 / 1.11人
交通関連のけが(死亡を含む):6.58人 / 5.61人
頭部外傷:5.80人 / 4.45人
喘息:18.67人 / 12.80人
自己免疫疾患:2.63人 / 2.22人
細菌感染:30.73人 / 23.94人
てんかん:1.14人 / 0.79人
消化器の自己免疫疾患:1.15人 / 1.00人
肥満:3.25人 / 1.77人
睡眠障害:4.31人 / 1.53人
1型糖尿病:0.50人 / 0.49人
ウイルス感染:34.16人 / 25.35人

研究機関:カロリンスカ研究所(医学疫学・生物統計学部門) / Second Xiangya Hospital of Central South University / Peking University / Örebro University / Indiana University / Chongqing Taiji Industry (Group) Co. Ltd
資金提供元:Swedish Research Council / Swedish Research Council for Health, Working Life and Welfare / Brain Foundation / Chinese Scholarship Council / カロリンスカ研究所
利益相反:著者らは、本研究に関する利益相反はないと申告しています

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SHO|鍼灸師

豪華客船の専属鍼灸師として、40ヶ国160都市以上を巡り、世界中のクライアントを治療してきた経験を持つ治療家。
24歳で全国グループの鍼灸整骨院にて責任者・エリア統括を歴任し、27歳で海外へ。
現在は、13年の臨床経験と海外で培ったグローバルな知見をもとに、世界最前線の情報を精査し、Synclyeeで発信しています。

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