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人間の思考や記憶、感情、そして全身の運動や感覚のコントロールなどを司る「脳」は、中枢神経系の中核を構成する器官です。
本記事は、国や公的機関が提示するデータに基づき、脳の定義や構造分類、およびニューロンによる神経伝達のメカニズムを整理したものです。
この記事を読んでわかること
- 公的な知見に基づく「脳の定義と保護構造」
- 解剖学的な知見に基づく「脳の構造分類」
- 人体の中で起こっている「ニューロンによる神経伝達」のメカニズム
本記事は、科学的知見や専門家の知見、研究データの紹介を目的としており、医学的アドバイスではありません。
診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。
また、本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。最新の情報については、必ずご自身でご確認ください。

著者:SHO|鍼灸師
豪華客船の専属鍼灸師として、40ヶ国160都市以上を巡り、世界中のクライアントを治療してきた経験を持つ治療家。
脳の定義
脳は脊髄とともに「中枢神経系」を構成する器官であり、体全体を統括する「司令塔」としての機能を持っています。
また、心臓から送られる血液の約25%を消費するなど、多くのエネルギーを必要とする器官でもあります。
脳の基本機能
脳は、次のような働きを担っています。
- 運動と感覚(触覚、嗅覚、味覚、聴覚、視覚)
- 思考 / 信念 / 記憶 / 行動 / 気分
- 体全体をコントロールする司令塔
脳の保護構造

脳は「頭蓋骨」「髄膜」「血液脳関門」という3つの構造によって保護されています。それぞれ以下のような役割があります。
▶︎頭蓋骨
脳を収容する骨の構造で、外部からの衝撃から脳を保護しています。
▶︎髄膜
最も外側の丈夫な層で、脳や脊髄を外傷や感染から守る
くも膜顆粒を通じて、髄液を静脈血へ吸収させる
脳の内部(脳室)にまで入り込み、髄液を作り出す組織(脈絡叢)をつなぎとめる
※くも膜と軟膜の間(くも膜下腔)は、髄液で満たされており、脳や脊髄を衝撃から守るクッションの役割を果たしています。
▶︎血液脳関門
脳の血管は、他の血管と違って細胞同士が隙間なく密着しているため、限られた物質しか脳に入れない仕組みになっています。
この血管の特殊な構造とバリア機能は「血液脳関門(けつえきのうかんもん)」と呼ばれ、有害物質や感染から脳を守っています。
脳の構造分類
脳には、大きく分けると「大脳」「間脳」「小脳」「脳幹」の4つの異なる領域が存在します。

※本文で解説していない部位が含まれることがあります。
大脳
脳全体のうち、最も大きな体積を占める領域であり、中央の深い溝「大脳縦裂(だいのうじゅうれつ)」によって、左右2つの半球に分かれ、以下の性質の異なる3つの系統に分かれます。
また、内部には、神経線維(軸索)が集まる「白質」があり、脳の各部位や脊髄をつないでいます。
白質の中でも、左右の半球をつなぐ部分は「脳梁」と呼ばれ、両者の間で情報をやり取りしています。
▶︎大脳皮質
大脳皮質(だいのうひしつ)は、大脳半球の表面を覆う「灰白質」と呼ばれる神経細胞の層です。
「外側溝・中心溝・頭頂後頭溝」と呼ばれる3本の脳溝(のうこう)によって、以下の4つの領域に分かれます。

- 前頭前野:行動の計画や抑制、判断、評価などの高次な認知機能
- 一次運動野:筋肉への運動指令
- 前頭連合野:状況に応じた行動の切り替え
- 一次体性感覚野:体性感覚(触覚・痛覚・温度感覚など)の処理
- 頭頂連合野:空間の把握や物の位置関係の認識
- 一次聴覚野:音情報の処理
- 側頭連合野:聴覚や視覚、体性感覚情報の統合や、記憶や情動との関連付け
- 感覚性言語中枢(ウェルニッケ野):言語の認知処理
※海馬や扁桃体(大脳辺縁系の一部)も含まれます。
- 一次視覚野:視覚情報の処理
- 視覚連合野(後頭連合野):物の形や色の認識や、空間や動きの把握
▶︎大脳基底核
大脳基底核は、大脳皮質の深部にある灰白質の集まりで、大脳皮質から視床を経由して再び大脳皮質へ戻る回路を形成しています。
運動の調節を中心に、学習や記憶などの認知機能にも関わっており、以下の5つの構造から構成されています。

※本文で解説していない部位が含まれることがあります。
大脳皮質からの情報を受け取る入力部の一つです。前頭前野や連合野とのつながりが強く、学習や記憶、認知的な判断に関わります。
大脳皮質からの情報を受け取る入力部の一つです。運動野とのつながりが強く、運動の調節に関わります。
線条体(尾状核・被殻)から届いた情報を、視床へ送り出す出力部です。内側部分(内節)と外側部分(外節)に分かれます
- 内節:情報を直接視床へ送る出口
- 外節:視床下核との間で情報をやり取りする中継地点
線条体から淡蒼球外節を経由してきた情報を、素早く出力部(淡蒼球内節・黒質)へ伝える中継地点です。
神経伝達物質ドーパミンを作り、尾状核と被殻に送ります。これにより、神経細胞の促進または抑制に働きかけ、運動の調節に関わります。
▶︎大脳辺縁系
大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)は、大脳皮質と間脳の間にある構造群で、記憶や情動の処理を中心に、運動の調節にも関わっており、以下の5つの構造から構成されています。

※本文で解説していない部位が含まれることがあります。
新しく経験した日常の出来事などを記憶(エピソード記憶)として形成する働きを担っています。
側頭葉の内側にある神経核群で、情動の中枢としての役割を担っています。さまざまな情動に関わりますが、特に恐怖や不安に強く関わっています。
視床や大脳皮質から情報を受け取る領域です。大脳辺縁系の各部位をつなぎ、記憶や情動に関わる神経回路(パペッツの回路)の一部を構成しています。
海馬のすぐそばに位置し、海馬とともに日常の出来事などの記憶(エピソード記憶)の形成に関わる領域です。
海馬から視床下部(乳頭体)へと情報を伝える神経線維の束です。大脳辺縁系の各部位をつなぐ配線としての役割を持っています。
間脳
間脳(かんのう)は、脳幹のすぐ上にある領域で、以下の4つの構造から構成されています。

※本文で解説していない部位が含まれることがあります。
▶︎視床(ししょう)
嗅覚を除くすべての感覚情報が経由する中継核です。
皮膚や目、耳などから届いた刺激は、視床を経由して大脳皮質へ送られます。
▶︎視床下部(ししょうかぶ)
体温を一定の範囲に保つ調節中枢です。
食欲をコントロールする中枢でもあり、下垂体に指示を送って「ホルモン分泌」を管理しています。
▶︎下垂体(かすいたい)
前葉と後葉に分かれており、以下のホルモンを分泌します。
- 成長ホルモン
- 副腎皮質刺激ホルモン
- 甲状腺刺激ホルモン
- 黄体形成ホルモン
- 卵胞刺激ホルモン
- プロラクチン
- バソプレシン
- オキシトシン
▶︎松果体(しょうかたい)
脳の内分泌腺の一つで、睡眠や覚醒のサイクル(体内時計)を調整するホルモン「メラトニン」を分泌します。
小脳
小脳は、脳幹に覆いかぶさるように位置する領域です。
運動が正確かつ滑らかに行われるように、動きをあらかじめ調整する働きを担っています。
脳全体に占める体積は15%程度ですが、神経細胞の約半分が小脳に集中しており、以下の3つに分かれます。
内耳の情報を受け取り、前庭神経核へ出力することで、身体の平衡感覚を調節します。
脊髄からの情報を受け取り、前庭神経核や網様体へ出力することで、姿勢を制御するとともに、血圧や循環などの自律神経機能を調節します。
大脳皮質からの情報を受け取り、視床を経て大脳皮質へ出力することで、随意運動(意識して行う運動)を制御します。
脳幹
脳幹は、大脳と脊髄をつなぐ領域で、以下の3つの部位で構成されています。
(分類によっては間脳を脳幹に含める場合もあります)
- 上丘:視覚に関わる反射の中継地点
- 下丘:聴覚情報の中継地点
小脳と大脳をつなぐ中継点です。大脳から届いた運動の指令を、小脳へ橋渡しする役割を担っています。
生命維持(呼吸、心拍、消化管の運動など)に直結する機能を常に制御しています。
脳の神経伝達メカニズム
ニューロンの基本構造
脳の各領域は、無数の「ニューロン(神経細胞)」がネットワークを作ることで、お互いに情報を連携しながら機能しています。
1つのニューロンは、以下の3つの部位で構成されています。

※本文で解説していない部位が含まれることがあります。
他のニューロンから届く信号を受け取る
樹状突起で受け取った情報を集約する
情報を次のニューロンへ送り出す
※ニューロンとニューロンがつながる接続部分は「シナプス」と呼ばれています。
神経伝達物質
シナプスで伝達される化学物質は「神経伝達物質」と呼ばれています。
代表的なものに、次のニューロンを興奮させるグルタミン酸と、興奮を抑えるGABA(γ-アミノ酪酸)があります。
このほかにも、ドーパミンやセロトニンなど、性質の異なる複数の神経伝達物質が、場面ごとに使い分けられています。
シナプスにおける情報伝達

情報は、電気信号としてニューロンの中を伝わっていきますが、「軸索終末(シナプスの手前)」まで来ると、電気信号だけでは次のニューロンには伝達されません。
そこで、シナプス側に蓄えられていた「シナプス小胞(神経伝達物質の詰まった小さな袋)」が細胞膜と融合し、内容物を隙間へと放出します。
放出された神経伝達物質は、「シナプス間隙」を漂って次のニューロンに伝達されて、受容体と結合することで、再び電気信号へと変換されます。
この電気と化学の変換が、無数のニューロンの間で絶えず繰り返されることで、脳全体の情報処理が成り立っています。
総括
- 脳は中枢神経系の中核であり、脊髄とともに全身をコントロールする「司令塔」としての役割を担っている
- 「頭蓋骨・髄膜・血液脳関門」という複数の構造が、脳を外部の衝撃や有害物質から守っている
- 脳の内部は、「大脳・間脳・小脳・脳幹」という4領域に分かれ、それぞれ異なる役割を担っている
- 大脳:思考や感覚の処理、運動の調節、記憶や情動の処理
- 間脳:感覚の中継、体温・食欲の調整、ホルモン分泌の管理
- 小脳:平衡感覚や姿勢の制御、運動の調整
- 脳幹:感覚・運動の中継、呼吸・心拍など生命維持に直結する機能の制御
- 脳全体の働きは、無数のニューロンが、シナプスを介して神経伝達物質をやり取りすることで成り立っている
※本記事は、公的機関および学術機関が公開するデータに基づき、科学的エビデンスを確認した上で執筆されています。




