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オートミールが体にいいという話を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかし、その理由はご存知でしょうか。
実は、その多くはこれまで解明されていませんでした。
今回の試験では、オートミールを食べることでコレステロール値が下がり、この変化には腸内細菌が作り出す「フェノール化合物」という成分が関わっている可能性が示されました。
この記事を読んでわかること
- オートミール摂取でコレステロール値が下がる傾向が見られた
- コレステロール低下には、腸内細菌が作る「フェノール化合物」が関わっている可能性がある
- 2日間の摂取の方が、6週間の摂取より効果がはっきりしていた
※本記事は、科学的知見や専門家の知見、研究データの紹介を目的としており、医学的アドバイスではありません。
診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。
また、本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。最新の情報については、必ずご自身でご確認ください。
用語解説
オーツ麦(えん麦)を潰したり挽いたりして加工した食品です。今回の研究で使われたのは、オーツ麦をローラーで平たく伸ばした「ロールドオーツ」と呼ばれるタイプです。
参加者をくじ引きのように偶然によって複数のグループに分け、条件ごとの効果を公平に比較する研究方法です。医学・栄養学の研究で、効果を科学的に確かめるための代表的な手法とされています。
内臓の周りに脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」に、高血圧・高血糖・脂質異常などが重なった状態のことです。放っておくと、糖尿病や心臓の病気につながりやすいとされています。
どちらもポリフェノールの一種で、オートミールなどの穀物に含まれています。ジヒドロフェルラ酸は、フェルラ酸が腸内細菌によって分解されてできる成分です。
植物に含まれる、抗酸化作用などを持つ成分の総称です。オートミールにも複数の種類が含まれており、腸内細菌によってさらに分解されることがあります。
オートミールなどに含まれる水溶性の食物繊維の一種です。コレステロールを下げる働きがあるとされ、これまでオートミールの健康効果の主な理由と考えられてきました。
掲載誌:Nature Communications
論文:「 Cholesterol-lowering effects of oats induced by microbially produced phenolic metabolites in metabolic syndrome: a randomized controlled trial 」
背景:未検証だった「腸内細菌によるオートミールの分解」と「コレステロール低下」の関係
内臓脂肪型の肥満に高血圧・高血糖・脂質異常が重なった状態は「メタボリックシンドローム」と呼ばれ、世界人口の最大31%が影響を受けているとされる大きな健康課題です。
オートミールにコレステロールを下げる効果があることは、20世紀初頭にドイツの糖尿病学者カール・フォン・ノールデンが考案した「オートミール療法」をきっかけに知られるようになりました。
また、腸内細菌がオートミールを分解して作り出す「フェノール化合物」が関わっている可能性が近年に指摘されていましたが、実際に検証はされていませんでした。
そこで研究チームは、メタボリックシンドロームを持つ68名を対象に、2日間の高用量オートミール食と6週間の中用量オートミール食が、コレステロールや腸内細菌にどのような影響を与えるかを調べました。
調査方法:「オートミール摂取」による検証実験
調査方法
- 実施期間:2020年9月 – 2022年7月
- 研究機関:ドイツ・ボン大学の栄養・微生物叢学科
- 試験デザイン:2件の無作為化比較試験
- 対象:メタボリックシンドロームを有する白人系の成人男女(45~70歳 / BMI27.0~39.9)
- 参加者:普段からオートミールを摂取しない西洋型の食生活を送ってる人(週1食以上を食べている人は除外)
比較試験
| 期間:2日間 | オートミール群 | 対照群 |
|---|---|---|
| 食事内容 | 1日3食 / オートミール100g | オートミールなしの代替食 |
| カロリー | 低カロリー(1100~1200kcal/日) / 食物繊維多め / β-グルカン13.5g | 低カロリー(1100~1200kcal/日) / 食物繊維多め / β-グルカンなし |
※オートミール群は、2日間の摂取後、その後6週間はオートミールをとらず普段の食事に戻した(効果が続くか確認するための追跡期間)
| 期間:6週間 | オートミール群 | 対照群 |
|---|---|---|
| 食事内容 | 1日1食をオートミール80gに置き換え | オートミールなし / 普段の食事のまま |
| カロリー | 普段通り(置き換え分を調整) | 普段通り(変更なし) |
測定項目
- 主要:血漿中のフェルラ酸 / ジヒドロフェルラ酸の濃度
- 副次:総コレステロール / LDL / HDL / 中性脂肪などの脂質代謝パラメータ / 便サンプルに基づく腸内細菌叢の組成 / 血液や便に含まれるさまざまな代謝物質
- コレステロール値は、認定医療検査機関での血液検査によって測定
確認方法
オートミールをきちんと食べていたかどうかは、以下の3つの方法で確認された。
- 血液中の特有成分(アベナンスラミド)の濃度:アベナンスラミドはオートミールに特有の成分で、オートミールを食べていれば血液中にその成分が検出されるため、客観的な裏付けとして使われました。
- 配布したパッケージの返却確認:参加者に必要な数のオートミールのパッケージを渡し、試験終了後に空袋や余った袋を回収して、実際にどれだけ食べたかを確認しました。
- 毎日のチェックリスト記入:参加者自身が、その日食べたものを毎日記録する形で自己申告しました。
結果:腸内細菌とコレステロールへの影響
コレステロール値の低下
2日間、オートミール食を摂取したグループでは、対照群と比較して以下の結果が見られた。
- LDLコレステロール低下:-16.26mg/dL
- 総コレステロール低下:-15.61mg/dL
この低下は、その後6週間オートミールをやめて普段の食事に戻した追跡期間中も、開始前の値を下回ったまま続く傾向が見られた。
一方、6週間の試験(1日1食を置き換える方法)では、オートミール群と対照群の間で明確な差は見られなかった。
血中フェノール化合物の増加
2日間の試験・6週間の試験のいずれでも、オートミール群で血漿フェルラ酸の上昇が見られた。
- 2日間の試験:フェルラ酸に加え、ジヒドロフェルラ酸(DHFA)も上昇
- 6週間の試験:フェルラ酸は上昇したが、DHFAには明確な差はなし
これ以外にも、複数のフェノール化合物がオートミール群で増加していた。
特にDHFAの増加は、腸内細菌が関与している可能性を示していると考察されている。
腸内細菌の変化
2日間の試験・6週間の試験のいずれでも、腸内細菌の一部に変化が見られた。
- 2日間の試験:腸内細菌が増加し、オートミールをやめた後は減少
- 6週間の試験:腸内細菌がオートミール群でやや減少
いずれの試験でも、腸内細菌全体の種類やバランスは大きく変わらなかった。
フェノール化合物・腸内細菌とコレステロールの関連
統合的な解析の結果、以下のことがわかった。
- 血中のフェノール化合物の変化は、コレステロール値の変動の一部を説明できた
- 腸内細菌の変化も、コレステロール値の変動の一部を説明できた
- フェノール化合物と腸内細菌の変化は互いに関連しており、腸内細菌がオートミール由来のフェノール化合物の産生に関わっていることを示唆している
なお、6週間の試験でも似た関連がいくつか見られたが、グループ間の差がはっきりしない項目が多く、慎重に解釈すべきとされている。
細胞実験・培養実験による裏付け
ヒトの細胞を使った実験でも、この関連を裏付ける結果が得られた。
- DHFAを加えることで、細胞へのコレステロールの取り込みが減少
- この傾向は、病気のある人だけでなく健康な人の細胞でも同様
さらに、オートミールと腸内細菌を一緒に培養する実験では、腸内細菌がオートミールから直接DHFAなどのフェノール化合物を作り出せることが示され、実際の試験で見られた変化と一致していた。
考察:研究結果の解釈と限界点
この結果から言えること
- フェノール化合物の増加が、コレステロール低下と関連している
- この関連には、腸内細菌の変化も関わっている可能性がある
- 2日間の摂取の方が、6週間の摂取よりも効果が明確だった
- 今回の食事だけによるコレステロール低下幅は、コレステロール低下薬(スタチンなど)による平均的な低下率(15~58%)と比較しても、臨床的に意味のある範囲と考えられている
この結果だけでは言えないこと
- 6週間試験で効果が穏やかだった理由(摂取量の少なさか、個人差か)は、この研究だけでは特定できない
- 研究の対象人数は臨床研究として典型的な規模にとどまり、個人差の大きさから、緩やかな効果が見逃された可能性がある
- 追跡期間中の食事の遵守は自己申告に基づいており、実際より良く見えている可能性がある
- コレステロール低下に関わっているとされる腸内細菌は、これまで培養されたことがなく、性質の詳しい研究はまだ行われていない
- 研究に参加した男女の比率に偏りがあり、これが結果に影響した可能性がある
- 性差の検証にはさらなる研究が必要である
総括:オートミールとコレステロールをめぐる新たな知見
これまでオートミールの脂質改善効果は、主に食物繊維(β-グルカン)によるものと考えられてきました。
今回の研究は、これに加えて、腸内細菌が作る「フェノール化合物」もコレステロールの低下に関わっている可能性を示しました。
ただし、6週間かけて穏やかに摂取した場合の効果には個人差が大きく、どのくらいの量をどう摂ればよいかは、まだ一律には言えません。
また、今回の結果は、参加者数の限られた一つの研究から得られたものであり、今後、より多くの人を対象にした研究で確認されていく段階にあります。
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※本記事は、国際的な学術誌『Nature Communications』に掲載された海外の査読済み論文および一次研究データに基づき、科学的エビデンスを確認した上で執筆されています。
論文情報
- 公開日:2026年1月14日
- 研究機関:ドイツ・ボン大学
- 掲載誌:Nature Communications
- 論文:「 Cholesterol-lowering effects of oats induced by microbially produced phenolic metabolites in metabolic syndrome: a randomized controlled trial 」
資金提供
資金提供元:本研究は、Diet–Body–Brain(DietBB) / ドイツ研究振興協会(DFG) / ドイツ糖尿病学会(DDG) / ドイツ穀物加工・製粉・デンプン工業協会(VGMS) / RASO Naturprodukteから資金提供を受けて行われました。
利益相反:論文中に利益相反の申告はないと明記されています。




