YouTubeの「安眠BGM」が逆効果に?レム睡眠を奪うリスクをペンシルベニア大学が指摘

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「雨音や川のせせらぎ」あるいはYouTubeや睡眠アプリで「安眠BGM」を流しながら眠りにつくことが、現代の快眠テクニックとして定着しています。しかし、その心地よいはずの音が、実はあなたの脳が最も必要としている「レム睡眠」を密かに奪っているとしたらどうでしょうか。最新の科学は、私たちが「安眠の味方」と信じて疑わなかった寝る時の音刺激が、実は睡眠の質を根底から壊している可能性を警告しています。その真実を、最新のエビデンスから解説します。

  • 安眠BGMが「レム睡眠」を平均19分も減少させてしまうという研究結果
  • 騒音対策として睡眠アプリなどを併用することに潜む「中途覚醒」のリスク
  • 脳の発達段階にある子供や乳幼児に寝る時の音刺激を与えるべきではない理由

※本記事は科学的知見の紹介を目的としており、医学的アドバイスではありません。診断や治療については必ず専門医にご相談ください。

本記事は、ペンシルベニア大学ペレルマン医学部の精神医学教授であり、睡眠と時間生物学の権威であるマティアス・バスナー博士(Mathias Basner, MD, PhD)らによる研究に基づいています。研究チームは25名の健康な成人を対象に、高度な睡眠計測器を用いて、航空機騒音やピンクノイズ、さらには耳栓が睡眠段階(深い睡眠やレム睡眠)にどのような影響を与えるかを7日間にわたり厳密に調査しました。

※ピンクノイズ:
滝の音や激しい雨音、あるいはテレビの砂嵐の音(ホワイトノイズ)をより低周波に寄せた「耳心地が良いとされる一定の雑音(50デシベル程度)」のこと。多くの安眠BGMやサウンドマシンに採用されています。

臨床試験の結果、サウンドマシン(睡眠アプリやYouTubeの安眠BGMなど)が睡眠に及ぼす影響について、驚くべき事実が判明しました。

  • レム睡眠の消失: ピンクノイズ(安眠BGMなどの一定の雑音)単独での使用は、通常の睡眠と比較してレム睡眠の時間を平均19分短縮させた。
  • 騒音併用の弊害: 外部騒音(航空機音)を打ち消そうとピンクノイズを併用した場合、深い睡眠(N3)とレム睡眠の両方が短縮され、夜間の覚醒時間が15分増加した。
  • 耳栓の圧倒的優位性: 騒音環境下において、耳栓は航空機騒音による深い睡眠(N3)の減少(約23分)をほぼ完全に防ぐことが示されました。参加者は、ノイズを流すよりも耳栓を使用した方が、睡眠が深く、翌朝の覚醒度も高いと回答した。

レム睡眠は、記憶の定着や感情の整理、そして脳の発達に不可欠なステージです。なぜ一定の音がこれほどまでに睡眠を阻害するのでしょうか。バスナー博士によれば、ピンクノイズのような「広帯域ノイズ」常に脳を刺激し続けるため、脳が完全にリラックスして深いステージに移行するのを妨げてしまうと考えられます。つまり、安眠のための音が、実際には脳に「絶え間ない情報処理」を強いているという状況が生まれているのです。

研究チームは、音による睡眠対策がもたらす副作用に対し、強い警鐘を鳴らしています。まず最も懸念されるのが新生児や乳幼児への使用です。脳が急速な発達段階にある子供にとって、レム睡眠の減少は将来的な認知機能や情緒の発達に影響を及ぼす恐れがあります。また、ピンクノイズやホワイトノイズを日常的に流し続けることは、自ら睡眠を浅くする原因を作っているようなものです。特に、外の騒音を消すために音を重ねる行為は、脳に二重の処理負担を強いることになり、結果として夜中に目が覚めてしまう「中途覚醒」を招くリスクがあります。

  • 安眠BGMへの依存を一度断つ:もし日常的に音を流しているなら、まずは使用を中止して、脳が本来求めている「自然な静寂」の中で眠る習慣を取り戻すことが先決です。
  • 外部騒音には「上書き」ではなく「遮断」で対応する:騒音を別の音でかき消そうとするのではなく、耳栓などの物理的な手段を選ぶ方が、脳に負担をかけずに深い睡眠を確実に守ることができます。
  • 子供の寝室から音の出るデバイスを遠ざける:脳が発達段階にある子供たちの健やかな成長を守るため、安眠を目的としたノイズマシンやアプリを安易に設置しないよう配慮が必要です。

「音がないと眠れない」という感覚は、実は脳が過剰な刺激に慣れすぎてしまった結果かもしれません。便利なアプリやガジェットが溢れる現代だからこそ、私たちは「何を加えるか」ではなく「何を手放し、静寂を取り戻すか」という視点を持つべきです。静寂という最も原始的で強力な快眠ツールを再評価することが、あなたにとって最も適した健康を、主体的に見つけ出すための”羅針盤”となるはずです。

Synclyee 公式編集部より

※本記事は、ペンシルベニア大学医学部(Penn Medicine)が公開した公式発表および、専門誌『Sleep』に掲載された研究データに基づき、科学的エビデンスを確認した上で執筆されています。

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Synclyee

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