
※この記事は 約5分 で読めます。
薄毛治療薬の副作用が気になって、続けるべきか迷ったことはないでしょうか。
国際的にも薄毛治療薬は数種類に限られ、効果や安全性の課題が指摘されています。
中国・広東薬科大学などの研究レビューでは、古くから使われてきた生薬「何首烏(カシュウ)」は、既存薬のように一つの原因だけを狙うのではなく、薄毛に関わる複数の要因に同時にアプローチしている可能性が示されました。
この記事を読んでわかること
- 何首烏(カシュウ)は、複数の要因に同時にアプローチしている可能性がある
- 抜け毛の原因物質を抑える働きや、頭皮の血流を改善する働きが報告された
- 安全性については、まだ十分な検証が必要な段階
本記事は、科学的知見や専門家の知見、研究データの紹介を目的としており、医学的アドバイスではありません。
診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。
また、本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。最新の情報については、必ずご自身でご確認ください。
用語解説
脱毛の中でも最も一般的なタイプ。男性ホルモンなどが関係するとされ、生え際の後退や頭頂部の薄毛などが特徴です。
1000年以上の歴史を持つ生薬で、主にツルドクダミ(タデ科のつる性多年草)を指します。 この植物は中国原産ですが、江戸時代に薬用として導入されて以来、日本国内の風土に適応し、現在では都市部の石垣や古い市街地などに野生化して各地で見られます。
(学名:Pleuropterus multiflorus / 和名:ツルドクダミ / 漢名:何首烏)
男性ホルモンのテストステロンが、体内で変換されてできる物質。毛包に直接作用し、AGAを進行させる主な原因の一つとされています。
中医学(中国の伝統医学)における体調のとらえ方の一つで、「肝」と「腎」の働きが低下した状態を指します。白髪や脱毛と関連づけて語られることがあります。
(西洋医学の肝臓や腎臓とは異なります)
公開日:2025年12月
掲載誌:Journal of Holistic Integrative Pharmacy
論文:「 Research progress on the application of Pleuropterus multiflorus in the treatment of androgenetic alopecia 」

著者:SHO|鍼灸師
豪華客船の専属鍼灸師として、40ヶ国160都市以上を巡り、世界中のクライアントを治療してきた経験を持つ治療家。
「何首烏(カシュウ)」の歴史
中国では古くから、生薬「何首烏(カシュウ)」が白髪の早期化や脱毛の治療に用いられてきました。
「何首烏」という名前は、中国の伝説にある「何(か)」という名の老人がこの植物を用いて、白髪が烏(カラス)のように黒くなり若返った」という逸話に由来します。
この生薬は、「肝と腎を補い、血を養い、風を払う」という伝統的な働きに基づいて、毛根を強くすることや、早くに白くなった髪を黒く戻すこと、徐々に進む脱毛を和らげることなどを目的に使われてきた歴史があります。
こうした伝統的な使われ方は、中医学でいう「肝腎不足」という状態と関連が深いとされ、この状態はAGAと似た特徴を持つと考えられています。
また、何首烏の効果は、現代のAGAで見られる一部の症状とも重なるとされ、近年、AGAの予防・治療への応用について研究が広がっています。
薄毛治療薬の効果は認められていても、なぜ多くの人が使い続けられないのか
AGA(アンドロゲン性脱毛症)は、世界中で多くの人にみられる代表的な脱毛のタイプと言われています。
国際的には、フィナステリドとミノキシジルが非外科的な治療薬として承認されていますが、いずれも一定の効果は認められているものの、副作用への不安から治療を継続できなくなる人も多く、新たな選択肢の必要性が指摘されてきました。
そこで中国の研究チームは、2015年から2025年にかけて発表された『伝統生薬「何首烏(カシュウ)」とAGAに関する国内外の研究』を包括的にレビューし、その効果やメカニズムを整理しました。
何首烏には、既存薬にはない働きも確認された
何首烏(カシュウ)には、既存薬のフィナステリドと同じ作用である「DHT抑制」と、ミノキシジルと同じ作用である「血流改善」が、どちらも確認されました。
つまり、既存の2つの薬が別々に受け持ってきた役割を、一つでまとめて果たせる可能性があると言えます。
それだけでなく、「毛包細胞保護」や「毛包幹細胞の活性化」、「成長因子(毛包の成長を促す物質と抑える物質)のバランス調整」も報告されており、これらは既存薬にも備わっていない性質です。
これらの結果から、既存薬ではカバーできていない部分にまで作用する可能性があると示唆されます。
このような効果とは別に、何首烏には肝臓に障害を起こす可能性が報告されており、重症例では急性肝不全に至った例もありました。
その背景には、有効成分の代謝や加工方法、個人差など複数の可能性が指摘されています。
ただし、これらの知見の多くは、動物実験や細胞を使った実験によるものであり、ヒトを対象にした大規模な臨床試験による裏付けはありません。
既存薬にない働きが見つかっても、まだ安全な選択肢とは言えない
今回の研究レビューでは、フィナステリドやミノキシジルなどの既存薬が、それぞれ一つの原因だけに対応してきたのに対して、何首烏(カシュウ)は、薄毛に関わる複数の要因に同時にアプローチしていることが確認されました。
ただし、伝統的に使われてきたものが、現代の科学的な検証が一部進んだからといって、今すぐ既存薬に置き換わる選択肢になったということではありません。
この生薬は、まだ研究段階であり、実際に肝障害のリスクも報告されている以上、自己判断で試すのは避け、専門家に相談することが大切です。
▼ 関連知識 ▼
中医学(TCM)とは?WHO国際基準の定義と基本原則|初心者でもわかる入門ガイド
公的機関のデータやWHO国際基準に基づき、伝統医学「中医学(TCM)」を解説。東洋医学との違いや基本原則、独自の診断システムから具体的なアプローチまで、初めて学ぶ方にも分かりやすく整理した入門ガイドです。
海外論文の検索方法|一次情報へアクセスする4ステップ
SNSに真偽の定かでない健康情報が溢れる現代。海外の一次情報(論文)にアクセスし、その信頼性を見極める4ステップを解説します。流れてくる情報を待つのではなく、翻訳機能やデータベースの活用法を学び、自ら読み解くスキルを身につけましょう。
※本記事は、学術誌『Journal of Holistic Integrative Pharmacy』に掲載された海外の査読済み論文および一次研究データに基づき、科学的エビデンスを確認した上で執筆されています。
詳しい調査方法が気になる方は、こちらもご覧ください
対象期間:2015年1月〜2025年12月に発表された研究
検索対象:中国と海外の主要な学術データベース(中国語 / 英語)
主な検索ワード:Polygonum multiflorum / 何首烏(He Shou Wu) / hair growth / androgenetic alopeciaなど
DHT抑制:75%エタノール抽出物(最大90.25%) / 50%エタノール抽出物(80.7%) / 中心成分(フィシオン・エモジン)
血流改善:血液粘度・赤血球凝集・血小板凝集の低下 / マウスの皮膚温度上昇
毛包細胞保護:毛乳頭細胞の増殖 / 毛髪繊維長の増加
毛包幹細胞の活性化:Wnt/β-カテニン・Shh経路関連タンパク質の発現増加
成長因子のバランス調整:Dkk-1の発現減少 / IGFBP2・VEGF・EGF等の増加 / TGF-β1・Dkk-1の減少
研究機関:広東薬科大学(腫瘍免疫学研究室) / 中国科学院華南植物園・中国科学院華南国家植物園 / 中国中医科学院中薬資源国家重点実験室 / 湖北和瑞盛業管理有限公司
資金提供元:広東省重点研究開発計画「広東省における重要な戦略的野生植物資源の保全と利用」 / 中央政府主要支出増減プロジェクト「貴重な伝統中国医薬資源の持続可能な利用能力構築プロジェクト」 / 広東省自然科学基金
利益相反:著者の一人が生薬関連企業(湖北和瑞盛業管理有限公司)に雇用されており、利益相反として開示しています






